有難屋マガジン

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2018.02.07

懐かしい記憶を呼び起こす、心においしいエッセイ本。

モノ・コト

懐かしい記憶を呼び起こす、 心においしいエッセイ本。
 
こんにちは。有難屋マガジンのとみーです。
今回は紹介の前に、思い出話を少し。
 
私は年が近い4人兄弟の中で育ちました。
今でこそみんな大人になりましたが、10年以上前、小学生の頃は当然毎日が戦いでした。
お手伝いの頻度から雑誌を読む順番、親に買ってもらうものの値段まで生活の中のありとあらゆる事象が火種になっていました。中でも厳しかったのは、おやつに関するお互いの監視への目。
 
特にアイスは絶対に「1日1つまで」。その厳格な規則は1パック6つの粒アイスにも「1粒=1つ」で適用されていて、こっそり2粒食べたことが発覚しようものなら即「こいつは今日アイスを2つたべた」という申告書が作られ、両親の帰宅と同時に訴えられました。密約してみんなでたくさん食べるという発想が微塵もないシビアな社会を生きた結果、なんとなく今でもアイスは1日2つも食べるものではない、ちょっと位の高い特別なおやつのような気がしています。
 
食べ物に結びついた記憶は気づかないうちに体にしみこんでいて、何年経ってもふとしたきっかけで呼び覚まされます。その記憶は味やにおいだけにとどまらず、新しいおいしさに出会えた高揚感やこっそり食べた背徳感など、当時の心の動きまで鮮明に再現し、その食べ物への魅力をより一層高めてくれます。
 
今回はそんな「食」にまつわるエッセイが詰まった、私の愛読書2冊をご紹介します。
 

① いとしいたべもの 森下典子(文春文庫/2006年)

いとしいたべもの 森下典子(文春文庫/2006年)

 
エッセイストの著者が語るのは、「オムライス」、「メロンパン」はたまた「茄子」などとても身近な食べ物23品にまつわる思い出。
世代も育った地も全く違う私でさえ、その思い出たちに心惹かれてしまうのは、食べ物への愛がこもったとても丁寧な描写のおかげ。食べたことのない水羊羹がとろけていく感覚や、見たこともないくさやを熱々に焼いて手でほぐし、心がはやるまま口に運んだときの魅惑の味が、本を読んでいるだけなのに口の中に広がるような気がします。「食べる」という行為を核に、著者の人生の1場面を頭の中で追体験しながら、その味の記憶を心ゆくまで堪能できる、ありがた〜い1冊です。
食欲が刺激されます・・・。
 
いとしいたべもの

 

② アンソロジー おやつ 阿川佐和子、阿部艶子、江口香織ら(PARCO出版/2014年)

アンソロジー おやつ 阿川佐和子、阿部艶子、江口香織ら(PARCO出版/2014年)

 

こちらは追体験するというよりは、42名の日本の作家の「おやつ」に対する思考を楽しむ1冊。
仕事中にだけ口にするおやつ、甘いものがなかなか手に入らなかった時代のおやつ、甘い物が苦手なのに食べざるを得なかったおやつ・・・さまざまな視点から語られる「おやつ」を味わううちに、自然と「自分の思い出のおやつ」に思いを馳せてしまいます
記事冒頭のアイスの記憶は、これを読むうちに呼び起こされていきました。
常に「今やること」に追われ、すぐそばの未来ばかり見てしまう毎日の中に、遠い過去をゆったりと想うありがたい時間を生み出してくれます。
 
アンソロジー おやつ

 
(ネットでは新品は出ていませんでしたが、本屋さんでは時折見かけるのでぜひ探してみてください。)
 
どちらも気軽なエッセイ集なので、電車の中やちょっとした待ち時間にぱらぱらとめくって楽しんでいます。外で読書を楽しむときは、有難屋のブックマーク(黒・赤2枚セット500円)もお忘れなく。
(とみー)
 

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