2018.02.01
楽しいお正月休みも終わり、これでしばらく旅行はおあずけ…。そんなときは、本で旅行気分を味わってみませんか。今回は、独断と偏見で選んだ3冊の「旅の本」をご紹介します!
こんにちは、有難屋マガジンのN川です。
皆さんは、本を読んで無性に旅に出たくなったことはありますか?
私は思い立って実際に旅行に行ってしまったことがあります。
そのきっかけになったのが、この本。
1973年、司馬遼太郎は『街道をゆく』シリーズの取材のため、モンゴルを旅しました。
新潟からハバロフスクへ飛び、イルクーツクへ行き、そこから首都ウランバートルに向かうという行程。
当時はモンゴルって遠い国だったのですね。
この本の魅力の根源は、著者のすさまじいまでのモンゴル愛です。
モンゴルやモンゴル人の、モンゴルらしさというものを、 外国人である日本人はここまで愛することができるのだなあ。
「一人あたりが占める空間が巨大なせいか、 どのモンゴル人も風貌や言語動作が鷹揚で、 年をとると、たいてい、百騎か二百騎の士卒をひきいているような 武将顔になる」という老人の顔の描写。
レニングラードの大学からモンゴルに帰省してきた娘が「よその国の草は匂わない。うその草のようだ」と言い、モンゴルが世界のどこよりもいい、と故郷を恋う様子。
パオ(テント)を押しつぶしそうなほどに濃密な、モンゴルの夜闇。
私がモンゴルを旅したのはこの本が書かれて40年近く経ってからですが、旅している途中、カチッカチッと見たもの、聞いたものがこの本の描写と噛み合っていくのを感じました。
経済成長の途上にあるモンゴルは、恐ろしいほどのスピードで変わっているというのにです。
移動の途中、雨上がりの草原に出て、ガイドさんに促され、足元の草をひと口噛んでみる。
アサツキのような香味がふわっと口の中に広がりました。
「よその国の草は匂わない、モンゴルが世界のどこよりもいい」と言った本の中の娘さんの言葉が、自分の言葉になって心に染み込んできました。
この国で育つ羊や、馬や、牛や、人間は、なんて幸せなんだろう。
この本と、この旅のおかげで、私は故郷というものをもう一つ持ったような気がしています。
司馬遼太郎『街道をゆく5 モンゴル紀行』
お次は『百年の孤独』で知られるG.ガルシア=マルケスの本です。
軍事政権に国を追われた映画監督が、別人を装って祖国に入国し、 秘密に仲間を集めてドキュメンタリー映画を撮る話。
本人への聞き書きをもとにしたノンフィクションで、旅行記ではありません。
私はこの本を旅行中の寝台車の中で読み始めたのですが、軍事政権下のチリにトリップしてしまったんじゃないかと思うほどの緊迫感で、ページを繰る手が止まらず、楽しみにしていた食堂車に行くのを忘れてしまいました。
でも、そんなに面白かったのに「あらすじを言ってみろ」と言われるとなぜか覚えていない。
この著者の本には、そんな魔術的な魅力があると思います。
(2018年1月現在、この本は新品在庫切れのようです)
G.ガルシア=マルケス『戒厳令下チリ潜入記』
最後はこちら。
東京農大名誉教授で、醸造学・発酵学が専門の小泉武夫先生が、アジアの珍妙な食べ物や酒を食べまくり飲みまくるエッセイです。
孵りかけの雛が入った卵をズズッと食べるラオスの「カイ・ルゥク」、強烈なアンモニア臭を発する韓国の醗酵したエイの刺身「ホンオ・フェ」、豚の血を豆腐に入れて固めた中国の「血豆腐」などの好奇心を刺激する食べ物が写真付きで紹介されます。
読んでも、あまり「食べたい」とは思わないのですが、
「これを食べようと思ったのは、どんな人たちなんだろう?」
「これをつまみに、どんな風にお酒を飲むんだろう?」と
旅に出たい気持ちが盛り上がって来るのは不思議なところです。
(なんとこちらも新品在庫切れ。ぜひ古本でお楽しみください)
小泉武夫『アジア怪食紀行』
読んでから旅に出るのもよし、旅先で読むのもよし。
観光や食事だけでなく、読書まで楽しめるなんて、旅って本当にありがたい。
旅先での読書には、
有難屋のブックマーク(黒・赤2枚セット500円)も
ぜひ連れていってくださいね。
ありがたや〜