2017.11.08
今から130年ほど前、モネやドガなど西洋美術のそうそうたる面々を夢中にさせた日本人画家がいるのをご存知でしょうか。その名は葛飾北斎。今回は、北斎の錦絵や版本と、彼に影響を受けた西洋の名作を並べて見られる超ゴージャスな美術展をご紹介します!
こんにちは、有難屋マガジンのN川です。
1856年、フランスの版画家・ブラックモンは
知り合いの工房で日本から届いた有田焼の箱に目を奪われました。
「なんだこれは!凄いぞ!」
彼を驚かせたのは、陶磁器そのものではなく、
緩衝材として入れられていた粗末な紙に刷られた絵でした。
ダイナミックな線、ユーモラスなポーズ。
それこそが、葛飾北斎の「北斎漫画」だったのです。
葛飾北斎。あの、富士山の手前に大波ザッパーンの
浮世絵を生んだ江戸時代の絵師ですね。
19世紀後半の西洋美術界に起こった日本ブーム“ジャポニスム”は、
ここからはじまりました。
この美術展は、ジャポニスム現象の中心となった葛飾北斎の作品と、彼の絵に影響を受けた西洋美術の名作を並べて見られる展覧会です。
順路の最初には、西洋の挿絵画家が北斎を模写した作品が数点。
同じ構図でそのまま写し取られているはずなのに、模写より北斎の本物の方が圧倒的にチャーミングです。
「北斎展」として単体で展示されるより、こうして比較してくれた方が北斎の魅力がパッと伝わってわかりやすいなあ。
美術展の入場口前には撮影ブースやフォトプロップも
「睡蓮」で知られるモネは、浮世絵を300点も収集した日本マニア。
今回の美術展では、自宅のダイニングにお気に入りの日本コレクションを飾る満足げなモネおじさんの写真も展示されていました。
正直、モネやドガの作品は
「このポーズに北斎の影響が見てとれる!」
「この構図はそれまでの西洋美術にはなかった!」と
キャプションや音声ガイドで言われても、素人の私の目には「そんなに影響、あるかなあ?」としか思えませんでした。
モネやドガが、北斎からの影響をしっかり自分のものにしてしまっているからでしょうか。
でも!モネやドガが、それまで見たことがない東洋の新しい作風にワクワクし、
「ねえ!これって新しいよね!?すごくない?」と興奮している様子は、キャンバスごしにビシビシ伝わってきました。
そして彼らをそんなにも夢中にさせているのは、我らが葛飾北斎。
日本人として、なんだか誇らしい。
北斎の時代の絵師は師匠による手本などで修行をするのが常でしたが、北斎は接骨術や解剖学を学んで身体の描きかたを研究しました。
オランダの解剖書の影響も見受けられるといいます。
何千kmも離れていても、一度も会ったことがなくても、西洋の人々と北斎、影響しあっていたんですね。
少し話が飛びます。
私が初めてパリのオルセー美術館に行ったとき、ちょうどゴッホの企画展が開催されていました。
展示されていたのは、有名な「ひまわり」や「自画像」ではありません。
ゴッホがミレーを模写した作品群と、その元になったミレーの作品が並べて展示してあったのです。
その当時、日本では「ミレー展」が来るといえばBunkamuraに長蛇の列ができ、高いチケットを買っても人だかりの先に絵が見えるか見えないかという状態…。
それでもみんな有難がってミレーを見ていました。
それなのに、フランスでは、ゴッホの模写を見るための比較対象として「本物のミレーの作品」が展示されている!
私は悔しくてギリギリと歯ぎしりをしました。
今回の「北斎とジャポニスム」展で、その悔しさが少しだけ取り返せたような気がします。
しかも、この絵画展でのモネやドガは、決して北斎の添え物ではありません。
並べて見ることで、北斎のチャーミングさも際立つけれど、モネやドガのみずみずしさもより引き立って来るのです。
さらに私たちは、彼らの絵の前に立つことで北斎に出会ったモネやドガの130年前の驚きや興奮まで追体験できてしまいます。
まさに1粒で2度も3度も美味しい美術展。
ああ、なんて有難いんだろ!
来年の1月までやってるこの展示、絶対見に行くべきですよ。
(有難屋マガジン・N川)
手ぬぐい専門店「かまわぬ」とのコラボ手ぬぐい(1,944円)や
北斎漫画の和綴じ豆本(各1,700〜1,800円程度)などグッズも充実
【会期】2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)
【開館時間】9:30~17:30
(金・土曜日は20:00まで、ただし 11/18は17:30まで)
【休館日】月曜日(ただし1/8は開館)、12/28~1/1、1/9
【料金】当日券/一般1,600円 大学生1,200円 高校生800円 中学生以下無料
【会場】国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7-7)
ありがたや〜