2018.05.16
鉄橋を渡る夜汽車を遠く眺める。寝台にごろりと横になって、心地よい振動に身をまかせる。寝台列車は、見るのも乗るのもいいものですね。今回は、私がこれまでに乗った寝台列車から、独断と偏見で選んだBEST3をご紹介します。
こんにちは。ここ十数年で寝台列車の数がどんどん少なくなり、
寂しさでいっぱいの有難屋マガジンN川です。
富裕層でも鉄道マニアでもない私には豪華な「カシオペア」や「トワイライトエクスプレス瑞風」なんてとても手が出ません。
そんなわけで今年のGWも寝台列車の旅に出かけられなかったので、今回は過去の思い出にひたろうと思います・・・。
「陸の上の国境を、見てみたい!」
私がモンゴル/中国国境の街・ザミンウデを目指したのは、そんな気持ちからでした。
ウランバートル駅から乗り込んだ寝台列車のコンパートメントは4人部屋で、男女の区分けもカーテンもなし。
2段ベッドには梯子がなく、上段の人は窓際のテーブルに足をかけてよじ上らなければ寝床に行けないという豪快なつくりでした。
私と同行者の他、50代くらいのモンゴル人男女(夫婦ではなくそれぞれ一人旅だった)が今夜のルームメイトです。
同室のおじさんの方は、陸路で上海万博に行く途中とのこと。
「今のモンゴルにはビジネスチャンスがたくさんあるのに、日本人はのんきすぎる。
そういうチャンスは中国人や韓国人が全部かっさらっていってしまうよ。
10年後、日本の入り込む隙間はもうないだろう。
日本はもっとモンゴルに投資すべきだ」と力説していました。
今思えば、おじさんの言うことは正しかったんだろうな。
モンゴル発展のニュースを見るたびに、話好きなおじさんのことを思い出します。
普段は全く接点がないような人と話せるのも、列車の旅の醍醐味ですね。
往路とは違い、帰路の寝台列車は生き馬の目を抜くワイルドな雰囲気でした。
お買い物好きのモンゴル人の皆さんが、中国国境で手に入れた家電や果物などの物資を持って乗り込んできて、われ先にと収納場所の陣取りをはじめるのです。
私たちのコンパートメントにも液晶テレビの段ボール箱を持った人がドカドカと入ってきて、2段ベッド上段の横にある天袋のような収納スペースに荷物を入れていきました。
「同室の人かな?」と思ったら、その人はなんの関係もない別の個室の人。
私はザミンウデに買い物にきた訳ではないし自分の収納スペースには余裕があるからかまわないんだけど、「ちょっと荷物入れさせて」と、ひと声かけてくれてもいいのに・・・。
そういった小さなカルチャーショックこそが旅の楽しさ。
車窓から見た草原の朝焼けも素晴らしかったし、食堂車の定食とスーテ・ツァイ(モンゴルの塩ミルクティー)も美味しかったし、忘れられない寝台車旅行となりました。
トルコで一番美味しかった食事は、アンカラ・エクスプレスに乗り込む前に食べた、アンカラ駅構内の食堂の「青唐辛子と牛肉の煮込み」でした。
しかもここの食堂、ホームの横にあって、寝台列車を眺めながらご飯が食べられるのです。
食事を済ませて私と友人が乗り込んだのは2人部屋の個室。
洗面台も大きな窓もあり、発車後しばらくするとサービス係の人が来て座席をたたみ寝台を整えてくれるし、至れり尽くせりでした。
私は2段ベッドの下に陣取り、消灯してからも、誰もいない通過駅のホームや、真っ暗な草原や川、まちのあかりを枕ごしに眺めていました。
これぞ寝台列車の旅。
朝ごはんをいただいた食堂車も綺麗でした。
今となっては、庶民が現実的に利用できる日本唯一の寝台列車となった気がするサンライズ瀬戸/出雲(東京から、岡山で高松行きと出雲行きに分かれる)。
以前、B個室1人用(カプセルホテルのような個室)には乗ったことがあったのですが、普通車指定席(ノビノビ座席)は乗ったことがなかったので、出張の帰路に利用してみました。
ノビノビ“座席”とは言うものの、絨毯敷きのスペースで横になって眠れるし、身体にかける布は用意してあるし、雑魚寝のようなスペースかと思いきや頭の部分はしっかり区切られているしで、個人的にはなんの問題もありませんでした。
深夜バスを思えば、何倍も快適じゃないか!
ただ、硬い絨毯敷きにそのまま寝るので、腰が悪い人には向かないかもしれません。
ノビノビ座席上段
通路から2段式のノビノビ座席を望む
移動しながら眠って、食事して、忘れられない旅体験までできてしまう。
寝台列車って、なんて有難い乗り物なんでしょう。
カジュアルな寝台車がもう一度増えてくれればいいのになあ。
(有難屋マガジン・N川)
ありがたや〜